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チャレンジ21
ベガルタ仙台×植松商会 トップ対談
東北の底力が支える文化と人財
植松商会(宮城県仙台市若林区卸町3-7-5)
http://www.uem-net.co.jp/
東北を代表する2つの企業のトップによるスペシャル対談
 
ベガルタ仙台と植松商会のトップが熱く語る
「東北の底知れぬ地域力に賭けた経営ビジョン」。
 東北を地盤とする機械工具商社として、独自のネットワークを構築し、地域のモノづくりを応援してきた植松商会は今年、創業60周年を迎えました。 ベガルタ仙台も今年、念願のJ1復帰を果たし、上位進出を狙う一方で、地域のスポーツ振興を目指しています。共通点は地域へのこだわり。 そこで、植松商会の植松誠一郎社長とベガルタ仙台の白幡洋一社長のお二人に、地域企業としての役割、東北の将来について語っていただきました。
時代に対応する柔軟性も大切。変化するも変わらぬ信念
植松社長 昭和25年、創業者の植松林吉が東北の産業開発と生活文化の向上に貢献したいとの「想い」をもって、機械工具の商売を始めました。こうした社会貢献への姿勢を当社の経営理念として、今日まで受け継ぎ、おかげ様で創業60周年を迎えることができました。創業の「想い」にこだわり、同時に時代時代の変化に即応することが我々の使命だと思います。

白幡社長 植松商会さんに比べればまだ若輩ですが、ベガルタ仙台も2009年に創立15周年を迎えました。プロのスポーツビジネスをやっている上で、表現は悪いですがミーハー的な芸能プロダクションにはしたくない。「興業」が前面に出てしまい勝ちですが、それに「事業」的視点を加味して発展し、企業として継続して成長し、その中で人も育つ経営をしていきたい。たまたま、おかげ様で今年、7年ぶりにJ1に復帰しました。一つの大きな変化ですよね。この変化をとらえて、社員のマインドを含めて会社の組織風土、企業風土を変革し、Jリーグの理念実現を目指したいと思っています。
スポーツは感動を与える心のサプリメント
植松社長 ベガルタ仙台はスポーツ、植松商会は産業と分野は異なりますが、地域や文化への想いやこだわりは共通していますね。仙台にサッカーのベガルタ仙台、野球の“東北楽天ゴールデンイーグルス”、バスケットボールの“仙台89ERS”が来たことで、何が変わったかというと、勝てば祝勝会をやり、負ければ悔し涙を流すような熱狂的なファンが増えたことです。made in東北の熱狂を生み出しました。交友関係、ネットワークが広がってきました。これは非常に大きな意味を持つことで、「熱狂する」という新しい文化が生まれつつあることだと思います。

白幡社長 基本的にサッカーは勝った負けたで最終的には評価されますが、それが本来の目的ではなくてスポーツ文化をどう振興していくのかが重要です。植松社長が「熱狂」について述べられましたが、スタジアムに行って熱狂的な応援をやりますと、サッカーを共通の話題として親子や夫婦、上司や同僚とも会話ができるようになる。さらにスポーツの価値観である「する」「見る」「支える」を継続する人が増えれば、皆が肉体的にも精神的にも健康になり介護の手を煩わせることはないという見方をすれば介護予防にもつながる。その意味でベガルタはコミュニケーションのプラットフォームの役割も担っています。スポーツは感動を与える心のサプリメントともいえます。だからこそ我々は常にフェアプレーに努め、後ろ指を指されるようなことは絶対にしてはいけないと、選手、監督には厳しく言っています。

植松社長 東北のスポーツ界と同様、東北の産業界も大きな変革期を迎えています。セントラル自動車さん、東京エレクトロンさんなど中央の大手の企業が、次々と工場進出し、宮城県は自動車産業や半導体産業の一大集積地となります。よく幕末の黒船の襲来に例えるんですが、外部からの圧力によって、東北という自分たちのアイデンティティーを問われている時代です。東北には熱狂という感覚からはややかけ離れた感じがしますが、こうした動きを熱意をもって迎えるべきだと思います。また、東北のネットワークを広げていくチャンスです。
林から森へ・・・60年目の転換
植松社長 企業30年説からいけば、ちょうど2クールが終わり、3クール目に入ったところです。象徴的だったのは60周年を迎えるに当たって、リーマンショックという100年に一回の危機的状況に遭遇したことです。そこでよく話をするんですが、2009年のダボス会議で、ある出席者の方が「この不況が、いつ終わるかということを議論しても意味がない。この議論が我々をどう変えようとしているのかを考えることが、はるかに大切だ」とおっしゃった。危機が終わっても我々が何も変わっていなければ、新たな危機がきたときに我々は何も対応できないということです。そういう意味で、我々が去年、一昨年とどう変わっているかと、自らのアイデンティティーを常に見つめ直さねばなりません。

白幡社長 企業、事業、製品が30年を超えて継続しているのは、そこにコンバージョンがあるからといえます。例えば普通紙複写機(PPC)は1938年に電子写真のカールソンプロセスが発明されて以来、50年以上が経ています。この間、アナログからデジタルへ、モノクロからカラーへの転換など、いくつかのコンバージョンがなされ、顧客に支持され使い続けていただいています。2代目の植松社長は何をなすのか。新たな30年は、何をコアバリューとして成長を担保するのかが鍵となります。創業者の植松林吉氏のお名前は「松を植えて吉(よ)き林となす」と解釈できますが、これからは松だけでなく、いろんな樹木を植えて森にしなければなりませんね。
植松商会のレゾンデートル(存在理由)
仙台市内ホテルにて植松社長 その通りです。私どもはこれからも東北にこだわった、モノづくり支援を徹底していきます。さらに東北6県をはじめ関東や名古屋地域、中国など海外の取引先とも連携し、東北のビジネスをサポートしています。地方の小さな工場が世界を代表するような企業になるお手伝いをし、そのプロセスをともに歩んでみたい。また、時代が要請する環境ビジネスにも20年来取り組んでいます。当社では「技術革新の奔流をつくるスーパーダム植松商会」を企業使命感として、800社を超えるユーザー様1社1社のニーズに対応するとともに、お客様同士の交流中継基地としての役割を果たすよう努めております。

白幡社長 トップの重要な役割の一つは、社内外へのトップの思い、メッセージの発信だと思います。企業の存在価値、理由を明確にする要素は、(1)ミッション(2)ビジョン(3)バリュー(4)プリンシパル(5)コーポレートステートメント‐の五つです。この視点で植松商会をみると経営理念、かくありたい姿(コミットメント)が分かりやすい。ビジュナリーカンパニーが具備すべき要件を備えているようにうかがえます。
「ねっぱす」精神で絆ネットワーク拡大
植松社長 東北地方には「ねっぱす」という言葉があります。くっつけるとか貼り付けるという意味です。先日のセレッソ大阪戦を見て、ふと、「ねっぱす」は根っこの「根」にサッカーのパスの「パス」だと思いつきましたが。当社はこの「ねっぱす」の精神で、お客さま同士、お客さまと製造業、お客さまと海外などをつなぐ、ネットワークづくりに努めています。これを「絆・ネットワーク」と呼んでいます。この間、機械工具商社は以前の感覚ですとモノを仕入れて、1円でも安くして買ってもらうのが商売でした。しかし、最近ではかつての垂直関係ではなくイコールパートナーといえる水平関係の「絆」づくりが重要です。製造業と商社が双方向的タッグを組む「地産地商」を推進しています。

白幡社長 お客様との親密で緊密な関係性、アナログ的とも言える関係が植松商会さんの競争力になっている。さらにメッセージ発信が巧みですね。「U?チャンネル」やブログの「がんばれ!東北のモノづくり」も内容がしっかりしている。ブログは幹部社員が毎日交代で書いており、社長を含め皆さん文章がうまい。見るより聞く方が、聞くより書く方がエネルギーを使う。エネルギーが多いほど身に付くものです。情報発信も常にブラッシュアップが求められます。

植松社長 当社には東北6県と栃木県に13拠点あります。この強みを生かすことが地産地商だと思います。地元でつくっている製品を我々がPRします。しかし、東北の方は自己主張が弱い。いい製品を持っているのにPRできていない。そこで、世界の果てまで伝えたい企業があるという思いを形にするために、例えばブログで月一回紹介しています。相互依存、相互研鑽、相乗効果、そういったお客様との水平関係をつくることが我々の役割です。
後に続く企業の灯台に
植松社長 昭和52年ごろでしたか、不況のあおりで主要取引先が倒産するなど、父親が苦労している姿を見ていましたが、その時に社員が一丸となって、仕入れ先を含めてお客様にありのままをお伝えしました。お客さまのご支援もあり、その後、10年かからずに借金を返し終えました。ほっとする間もなく、父が目標の喪失を恐れて、次の目標として決めたのが上場でした。当時、社員誰一人として信じなかったと思います。この規模で、この業界で上場することは絵空事と思われましたから。

白幡社長 創業者の植松林吉氏は「会社を永遠に発展させ、日本一を目指す」という決意をもって、1991年(平3)にジャスダックに上場されました。私自身も東証への上場と上場廃止を経験しておりますが、上場にはメリットもあればデメリットもあります。コンプライアンスやコーポレートガバナンスは上場の有無に関係なく留意しなければなりません。

植松社長 機械工具商社は製造業の縁の下の力持ち的な存在ですが、機械工具商社なしにはモノづくりは成り立ちません。もっとその存在が認識されていいのではと感じます。当社は全国の直需の機械工具商社の中で、唯一上場していますが、後に続く企業の灯台になりたいと思っています。常に襟を正し、コンプライアンスを遵守していきます。
創業者のDNAを継承しながら継続させるという使命感
白幡社長 創業者の著書「わが道」を読ませていただきましたが、そこで感動したのは、①素直さと向上心をお持ちである②分からないことは他人、他社から学ぶ③常に環境変化を見据えた高い目標を掲げ、それにチャレンジする④事業・販路拡大と撤退収束の果断、スピーディーな判断⑤巧みな情報発信です。これらを幹部の方々は継承してきたと思います。しかし、昔ならDNAは親子でつながって伝承していくわけですが、最近の医療は遺伝子治療ができるようになった。昔だったらできない新しい遺伝子を入れることができる。松尾芭蕉の「不易流行」という言葉がありますが、残すべきものと変えるべきものをどう取捨選択して、次の世代に引き継ぐのか。60年たって変えるべきものは何なのか、社長をはじめ幹部の方々がどう社員教育されているのかが重要です。また、自分も実践してきましたが、一皮むけた経験を部下に語ることが必要。逆境を悩みながらどう乗り越えてきたかを、自分の言葉で次世代のリーダーに語ることが必要かと思います。

植松社長 創業者は希望を抱いて日本一、世界一を目指した。また働く喜びを教えくれました。日本の高度成長を支えた日本人の強さはそこにあったのでは。これをDNAとして伝え、絶やしてはいけません。今年度のスローガンは「創力、お客様と創る輝ける未来」ですが、お客様、地域とともにという理念をメッセージとして伝え、粘り強く具現化していきたいと思います。
“人事戦略”新陳代謝で新しい風土創造
植松社長 私どもは商社ですので人がすべて。人をいかに育てていくのかがポイントとなります。スポーツでも芸能人でも活躍している人にはハーフが多い。新しい血を導入することによって、1+1が3にも4にもな る。この点で東北は純血主義で、どちらかというと血の伝承を大事にする。白幡社長も東京から宮城県に移り住まれて40年近くなられるそうですが、いかがですか?これは今後の東北にとって良いことではありません。悪い意味の純血主義は捨てるべきだと思います。東京、大阪、さらには海外から人を受け入れて混血を増やしていくべきです。企業にも新しい血が入り、新しい風土をつくる。それが白幡社長が言われたように、松の林だけではなく、新しい木を植え森にすることにつながると思います。当社では、次世代の部門長教育をやっています。5年後、10年後の部門長候補、さらに次世代の候補に自覚を持たせる教育を進めています。血の入れ替え、新陳代謝を進めています。今年度は13部門のうち営業部門長10人を異動、このうち3人の新部門長を登用しました。新陳代謝はリスクも伴いますが、これを企業の成長につなげたいと思います。

白幡社長 ベガルタではフロント20人、強化部、育成部、さらにトップチームを入れても合計80人しかいません。指示命令対象はさらに限られますが、規模の大小に関係なく人事戦略はきちっと考える必要があります。基本は、人材の確保、育成、配置、評価、処遇です。ベガルタの幹部会でも東北リコー時代の経験を話しています。最近スタッフもプロパーだけになりましたが、今まで教育の機会を得られなかった人が多い。まずは幹部をしっかり育てるため、幹部会では具体的な事例をベースに、こうあるべきだという勉強に取り組んでいます。もうひとつ、ベガルタでは、育成部門でお子様たちを1000人近く預かっています。社員と同様に子供も育成しています。育成部長とよく話しているのは、どれだけ四つの「育」に対し貢献できるかを考えようということです。四つの育とは「知育」「体育」「徳育」「食育」です。学校や家庭でも十分対応しにくくなった「育」をサポートできる指導できる指導者、コーチを育成したいと考えています。また、J1復帰を契機に、フロントの行動規範として、「挑む」「つなぐ」「学ぶ」を今年のスタートの時に掲げました。2月からローテーションも実施しましたが、つながなければ良い仕事はできません。行動規範通りやらないと良い仕事ができない環境をつくりました。皆バタバタしていますが。
東北新時代の幕明けいよいよ黎明の時
植松社長 60周年は通過点にしか過ぎませんが、2010年は将来から俯瞰して重要な年になると思います。東北はチャンスとピンチの両面を経験します。一人でも多くの方に植松商会の存在、機械商社として果たせる役割がこれだけあるんだということを知ってほしい。ご批判大歓迎です。不完全な植松商会の姿を皆さんにさらけ出して、それをご批判いただきたい。こうした思いを込めてメッセージを発信し続けたいと思います。

白幡社長 植松商会さんには企業の問題解決の代行業にもっと磨きをかけてほしい。植松社長がよくおっしゃる地産地商は、一般的な言葉で言うと、販売代行業ですね。まさしく800社、1000社を「ねっぱす」仕事で、社員の一人ひとりが「ねっぱさー」ですね。これからもお客サイドに立ったスーパーダムのイメージをさらに打ち出してほしい。ベガルタでは、Jリーグの理念を達成するとともに、地域に根ざし、地域に愛され、関係者がハッピーになれるプラットフォームづくりを議論しています。宮城県のサッカーのレベル向上を目的とする「宮城チャレンジリーグ」の発足もその一つです。「おらが町」からワールドカップに出場する選手、さらには指導者を輩出すことは素晴らしいことです。半面、選手寿命は短い。彼らのセカンドキャリアをサポートし、ともに地域で過ごせる環境も整えたいと思います。私も老骨に鞭打って頑張るつもりです。

植松社長 ワールドカップ南アフリカ大会では、日本代表が大善戦し、日本中が熱狂し感動しました。ベガルタ仙台さんにもシーズン後半の健闘を期待しております。是非とも東北を熱く盛り上げていただきたい。本日はありがとうございました。 
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